年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、9月4日から「日露俳句コンテスト」の入選句シリーズを掲載しております。
今回は一般の部の10回目です。
日露俳句コンテスト
一般の部(10)
蛭田秀法選(2)
入選
Зацвёл шиповник,
Аромат расстаял
Соленым Бризом..
Грибушина Елена ギリブシナ エレナ
Gribushina Elena
イバラ さく
しおかぜかおり
とけた..
wild Rose blooms- -salt wind – this flavor melted.
海辺に野バラの咲く季節。秋田の日本海沿いの散策路にもこんな所がある。海からは潮風。バラの香りと潮のにおいが混じり合い、身も心も溶けそうである。
от края
до края моря
весенние сумерки
Семенова (Лариса) Иса
セミョーノワ (ラリーサ) イーサ
Semenova (Larisa) Isa
落つる日に 果ても無く染む 春の海
( Translation Sergey Volkovsky, Tokyo )
From the edge
to another edge of the sea
the twilight of the spring is glowing
( Translation Marina Planoutene, New York City )
夕日の沈む頃、茫洋とした春の海を眺める。大海は果てしなく夕焼けに染まっている。
Далёкое море
тихо рокочет на ухо –
витая ракушка.
АДЫЕВА Дарья Владимировна アディエワ ダリア
ADYEVA Daria
遠い海
静かな波の音
巻貝に
Distant Sea – quiet sound of the wave (in the ear) – spiral shell.
海辺で巻貝を発見。一見耳の形をしている。こんな巻貝もきっと静かな波の音を聞いているに違いない。遠い彼方の海から寄せて来るこの静かな波の音を。
С гнилым абрикосом
Кошка играет
Ветер с моря.
Васильев Игорь Юрьевич
VASILJEV Igor
腐りかけたアンズと
猫が遊んでいる
海からのそよ風
With a rotten apricot
A cat is playing
Breeze from the sea
腐りかけたアンズが転がっている。しかし、そんなことは気にとめないのか、猫が無邪気に戯れている。平凡で、日常茶飯事の一コマであるが、海からのそよ風という下の句で詩的になっている。
белые чайки
держатся чутко вдали
первые льдинки
Романчук Анатолий Николаевич
Romanchuk Anatoliy Nikolaevich
白いカモメの群
注意し遠くを見る
最初の氷
a flock of white seagulls
stare into the distance carefully
first ice
白いカモメの群れが何かを感知し、遠くを見ているようだ。遠方に目を向けて見ると今年の最初の氷が浮かんでいる。冬がもうそこまで来ている。カモメたちも冬支度に取りかかることになる。そして、考える。今年の冬の計画を。
Волны морские
За берег цепляются
Чайки смеются
Прилуцкий Сергей Юрьевич
海の波は
岸に固執す
カモメを笑わせる
sea waves
stick to the shore
making seagulls laugh
絶えず岸に打ち寄せる波。句になると「なるほど」と思ってしまう。カモメはそんな波のあり様がおかしく見えるに違いない。
пульс океана
замерев я слушаю
мы одной крови
ПЛАНУТЕНЕ Марина
PLANOUTENE Marina
海の鼓動 -
私は耳を傾ける -
私たちは同じ血を持っている
The pulse of the Ocean – I’m listening – We’re of the same blood.
海は生きている。波の荒い時も穏やかな時もある。我ら人間も同じだろうか。
красный закат
полощет крылья в воде
чайка
Хузин Радион
KHUZIN RADION
赤い日没
翼をすすぐ水の中の
カモメ
red sunset
in water rinsing wings
the seagull
夕暮れ時、シャワーを浴び一日の汗を洗い流す。カモメも同じようにリフレッシュするかのようである。
бессолнечный день
на кайме Беломорья
ярче лисички
Вайман Зиновий
Vayman Zinovy
日のささない日
白い海の浜辺では
アンズダケが輝いている
sunless day
on the White Sea beach
the chanterelle brighter
太陽は顔を出すときも出さないときもある。
しかるに、海辺に生える「アンズダケ」は、日のささない日に一層の存在感を示し、いつもより輝きを増している。
разбитая лодка
пристанище крабов
в июньский зной
КРОТОВ Иван Иванович
KROTOV Ivan
壊れたボート ―
カニの天国 ―
6月の暑さ
a broken boat—crab’s heaven—in June’s heat
Translated by IriniRadchenko
破壊されたものに来るものあり。地獄は、あるものには天国となる。壊れたボートはカニにとって6月の避暑地となる。
English translations by Olga Sumarokova 英訳 スマローコヴァ オリガ
Japanese translations by Hidenori Hiruta 和訳 蛭田秀法
The next posting ‘『詩の国秋田』第4号「日露俳句コンテスト」結果(1)’ appears on October 4.
―蛭田 秀法(Hidenori Hiruta)