『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 学生部門 (3)  五十嵐義知選 

  年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、9月4日から「日露俳句コンテスト」の入選句シリーズを掲載しております。 今回は学生部門の3回目です。  日露俳句コンテスト  学生部門(3)   五十嵐義知選   特選   葉桜の隙間に見ゆる大海原 秋田工業高等専門学校 櫻井公平   Сквозь узор листьев сакуры Виднеются Просторы океана   in sprouting fresh leaves seen through an opening of the cherry tree the mighty ocean   海に程近い小高い丘に面した場所であろうか。花が散り桜並木は一面葉桜の並木となった。花時或いは花吹雪のころは花のほうに視点が置かれるのだが、葉桜となると葉の向うに見える紺碧の海原が葉や木々の隙間を埋めるように広がり、若葉の緑と海の青さが鮮やかなコントラストをなすのである。     入選   陽炎に鎮魂の海夢たくす 国際教養大学 岡知奈実   Струится воздух Море утешает … Continue reading 『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 学生部門 (3)  五十嵐義知選 

『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 学生部門 (2) 矢野玲奈選

  年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、9月4日から「日露俳句コンテスト」の入選句シリーズを掲載しております。 今回は学生部門の2回目です。   日露俳句コンテスト   学生部門(2)   矢野玲奈選   特選   背中から五月のひびき潮の香 秋田工業高等専門学校 佐々木高一   Из-за моей спины Майские звуки И пахнет прибой   from behind my back the May sound and the fragrance of the tide   五月のひびきと捉えたところが良いです。     入選   波が波追いかけて逢う夏の崖 京都大学 (スウェーデンストックホルム大学留学中 … Continue reading 『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 学生部門 (2) 矢野玲奈選

『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 学生部門 (1) 内村恭子選

  年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、9月4日から「日露俳句コンテスト」の入選句シリーズを掲載しております。 今回は学生部門の1回目です。   日露俳句コンテスト   学生部門(1)   内村恭子選   特選   波が波追いかけて逢う夏の崖 京都大学 (スウェーデンストックホルム大学留学中)                   黒岩徳将 Волна за волной Спешит на свидание С летним берегом   A wave heads for another wave Meeting a cliff in the summer   (特選) 一番だから目を引いたのかもしれないと何度も全体を読み直したのですが、やはり良い句です。先に来て待つ方の待ちきれない気持ちと、会いにゆく方のはやる気持ちのどちらも「波が波追いかけて」という表現に託されており、清冽な印象を残す句です。三島由紀夫の「潮騒」を俳句にするとこのようになるのかもしれません。     入選   切り出せぬ海の波間に陽の陰る   国際教養大学 三沢萌夏   Не … Continue reading 『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 学生部門 (1) 内村恭子選

『詩の国秋田』 第4号「日露俳句コンテスト」高校生部門(6) 石田冲秋選

  年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、9月4日から「日露俳句コンテスト」の入選句シリーズを掲載しております。  今回は高校生部門の6回目です。   日露俳句コンテスト   高校生部門(6)   石田冲秋選   特選   夏の浜波の行く先あと知れず 秋田県立角館高等学校 関浩太郎   Летние дюны берега Куда уходят, Никто не знает   summer beach the destination of waves no telling     入選   風薫る海の向こうに何思う 秋田工業高等専門学校 渡邊紫乃   Ветер странствий, Как думаешь, Что за морем?   it breezes … Continue reading 『詩の国秋田』 第4号「日露俳句コンテスト」高校生部門(6) 石田冲秋選

『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 高校生部門(5)  工藤一紘選 

  年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、9月4日から「日露俳句コンテスト」の入選句シリーズを掲載しております。 今回は高校生部門の5回目です。   日露俳句コンテスト   高校生部門(5)   工藤一紘選   特選   希望背に素足駆り出す夏の海 秋田工業高等専門学校 澤田石達也   С надеждой за спиной Мчусь босой, Летнее море   with hope in the back I rush in bare feet summer sea     入選   潮風で青く紛れる夏帽子 秋田工業高等専門学校 和泉達也   Морской солёный бриз Из-за тебя панама … Continue reading 『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 高校生部門(5)  工藤一紘選 

『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 高校生部門(4) 手島邦夫選 

  年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、9月4日から「日露俳句コンテスト」の入選句シリーズを掲載しております。 今回は高校生部門の4回目です。   日露俳句コンテスト   高校生部門(4)   手島邦夫選   特選   潮風が味を濃くする海の家 秋田県立角館高等学校 白石孔大   Соль морского бриза Сильнее чувствуется В домике у моря   salt breeze gives strong seasoning – beach houses   子供の時海辺で食べたものは確かに味が濃かった、と納得させる。 潮の香りや海の家の雑多な食べ物の匂いが満ちている句である。     入選   風鈴の音色染み入る被災海 秋田工業高等専門学校 横山悠貴   Отзвуки колокольчика на ветру Доносятся неясно … Continue reading 『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 高校生部門(4) 手島邦夫選 

『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 高校生の部(3) 五十嵐義知選

  年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、9月4日から「日露俳句コンテスト」の入選句シリーズを掲載しております。 今回は高校生部門の3回目です。   日露俳句コンテスト   高校生部門(3)   五十嵐義知選   特選   一面に澄みわたりけり夏の海 秋田工業高等専門学校 山下瑶太   Повсюду вокруг вода Чистая – Летнее море   all over the water it is clearing up – the summer sea   夏の朝の早い時間。海岸に人影はなく、沖を行く船も見当たらない。全てが動き出す前の波の穏やかな海原である。夏の海というと入道雲を沖に据えて、波飛沫のきらめく動きのある海を思わせるが、掲出句はあえて夏の海の静かな一面を描き、その後の強い陽射しや海辺の喧騒を想起させるのである。     入選   夏の海水面揺らめく月あまた 秋田県立能代北高等学校 大鐘智香子    Летнее море Дрожь … Continue reading 『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」 高校生の部(3) 五十嵐義知選

『詩の国秋田』 第4号「日露俳句コンテスト」高校生部門 (2) 矢野玲奈選 

  年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、9月4日から「日露俳句コンテスト」の入選句シリーズを掲載しております。  今回は高校生部門の2回目です。   日露俳句コンテスト   高校生部門(2)   矢野玲奈選   特選   海近し夏の潮の香肌でかぐ 秋田工業高等専門学校 白鳥翔   Приближаюсь к берегу Запах летнего моря Ощущаю на своей коже   the sea approaching the smell of summer tide I take on my skin   いつのまにか肌に潮の香が沁みこむほど海に近づいているのだなぁという喜び、海への期待感を「かぐ」という動作で表現したところが良いと思います。     入選   潮風と水の香りと海の青 秋田県立角館高等学校 三浦志穂   Соленый … Continue reading 『詩の国秋田』 第4号「日露俳句コンテスト」高校生部門 (2) 矢野玲奈選 

『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」高校生部門(1)  内村恭子選

  年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、「日露俳句コンテスト」の入選句シリーズを掲載することになりました。 当コンテストについては、下記のサイトをご参照ください。   https://akitahaiku.wordpress.com/2012/04/14 https://akitahaiku.wordpress.com/2012/04/15 https://akitahaiku.wordpress.com/2012/04/16 https://akitahaiku.wordpress.com/2012/04/17   なお、入賞句については、9月22日(土)秋田市で開催される「日露俳句大会」秋田大会と9月29日(土)ウラジオストク日本センターで開催されるウラジオストク大会で発表され、表彰式を行います。 大会の後で、当サイトでも掲載いたします。   日露俳句コンテスト   高校生部門(1)   内村恭子選   特選   波音のすずしい音色着信音 秋田工業高等専門学校 松川直樹   Шум волн – Так звучит прохлада, Оживляет, как звук принятого сообщения   the sound of waves its cool tone it is the ringing tone   … Continue reading 『詩の国秋田』 第4号 「日露俳句コンテスト」高校生部門(1)  内村恭子選

『詩の国秋田』 第4号 「露月山人、衆目には見えない 『赤い糸』 を詠む」

  年会誌『詩の国秋田 : Akita – the Land of Poetry 』第4号のEパンフレットによる発刊にあたり、秋田大学名誉教授・文学博士石川三佐男先生から次のような玉稿を賜りました。      (『詩の国秋田』2012.9.3  vol.4  電子版「https://akitahaiku.wordpress.com/」掲載)                                                   露月山人、衆目には見えない「赤い糸」を詠む                                                                                                                      秋田大学名誉教授(文学博士) 石川 三佐男   【緒言】平成六年(1994)十二月、筆者は能代市の成田建さんから落款に「露月山人題」とある漢詩句の書(軸物一幅・成田家蔵)の訳読を依頼されたことがある。訳読を通じて分かったことだが、この書は明治三十年ころ成田建さんの祖父母結婚時の祝賀詞であるらしい。参考までに、この作品は「雄和の文化財」第七集『石井露月遺墨集』(昭和六十三年)には収録されていないことを言い添えておこう。 【原詩句】解不解可解不可解維花兮維容兮沈香亭北倚欄干                  露月山人題(印) 【訓読文】解けんとして解けず、解くべくして解くべからず          維(こ)れ花、維れ容(すがた)、沈香亭の北のかた欄干(おばしま)に倚(よ)る                                                                                                                    露月山人題す 【語釈】○解不解―「解」はともに「とける」と読む自動詞。愛の契りや楽しい想い出などが自然にとけ消える意を表す。その主体は実は目に見えない「赤い糸」に他ならない。○可解不可解―「解」はともに「とく」と読む他動詞。愛の契りや楽しい想い出などを意識的にとき消す意を表す。「解不解可解不可解」は頼山陽の漢詩文及び中国古典が典故。その主体が霊妙な「赤い糸」となっている点は露月山人の発明だろう。○維花兮維容兮―「維」は助字で「これ」と読み、句の初めや中間に用いて語調を整える。「兮」は韻文の句中や句末に用いて語調を整え余情を添える助字。「花」「容」は誇れる名花(芍(しやく)薬(やく))と佳き人の姿。新郎新婦に呼びかける詩的措辞となっている。句末の典故から推せば、第一義的には唐の玄宗皇帝と楊貴妃を表す。第二義的には成田建さんの祖父母結婚時の幸せに満ちた容姿を表す。○沈香亭北倚欄干―唐の玄宗皇帝が楊貴妃を得て「沈香亭」(宮中の庭園にあったあずま屋)の北で欄干(おばしま)にもたれ、芍薬の花を賞(め)でつつ永遠の愛を契り楽しんだという意。この句は李白の清平調詞第三「名花傾国両相歓~沈香亭北倚欄干」が典故。露月山人が詩仙李白の詩に精通していた一面を示す。○露月山人題―露月山人がこの祝詞を作り揮毫した。 【口語訳】愛の契りや想い出は永遠にとけ消えないものである。消そうとしても消すことができないものである。(見よ)この名花と良人は、あの唐の玄宗皇帝と楊貴妃が沈香亭の北のかた欄干にもたれ、芍薬の花を賞(め)でつつ永遠の愛を契り楽しんだという故事そのものだ。 【主題】明治期に「赤い糸」で堅く結ばれた能代の成田夫妻の夫婦愛の美しさと永遠性を祝福し、兼ねて唐の玄宗皇帝と楊貴妃の愛の契りを例示して錦上花を添えている点にある。 【結語】本作品は目に見えない「赤い糸」を色彩を表す文字を一切用いず鮮やかに描出している。これは世阿弥『風姿花伝』の、いや露月山人流の「秘すれば花なり」ということなのだろう。                                                       (2012年8月14日 識之)     玉稿は9月22日(土)に開催される「日露俳句大会」秋田大会のお祝いとしてご恵贈賜りました。 さらに、大変うれしいことに石川先生には当大会で記念講話もお願いできました。 大会要項は次の通りです。              日露俳句大会(要項) はじめに    平成23年9月末、秋田国際俳句・川柳・短歌ネットワークの主催によりロシア沿海地方の州都ウラジオストク市で俳句を通じた文化交流を行った。秋田県、国際教養大学、国際俳句交流協会、日航財団の支援と、現地でのウラジオストク日本センターと極東連邦大学の全面的な協力のお陰で画期的な文化交流となった。 東方学校で俳句レッスン、極東連邦大学で俳句ワークショップ、ウラジオストク日本センターでは俳句の講演を行った。 交流は反響を呼び、極東連邦大学で日本語と日本文学を専攻している学生や、ウラジオストク日本センターで日本語と日本文化を学んでいる市民の間に俳句に対する興味関心が起こり、俳句熱が一気に高まった。 結果として、本年5月に日露俳句コンテストを開催。9月に秋田、ウラジオストクの両市で日露俳句大会を開催することになった。 本年は石井露月生誕140年に当たる年であることから、露月の偉業を記念すると共に、日本とロシアの友好親善を深めたいと考えている。 俳句大会が秋田、ウラジオストクの両市で開催されることにより、文化交流の基盤が確固としたものになり、俳句を通じた市民レベルでの日露文化交流が一層活発になることを期待しております。   秋田大会     9月22日(土) 俳句大会 13:30 ~16:30  会場 ジョイナス(秋田県民会館に隣接)千秋公園(吟行) 日程    開会 … Continue reading 『詩の国秋田』 第4号 「露月山人、衆目には見えない 『赤い糸』 を詠む」